♪ 小さな私塾の先生から見た子ども達、風景、異文化の世界 ♪
花と光と風と…
 Index
北大植物園  June 2010





ムラサキ ハシドイ
SYRINGA VULGARIS
(ライラック)






ヘンリー ハシドイ
SYRINGA HENRY







  時は6月下旬、この北海道にも遅い初夏がやっ
てきました。と、同時に北国のこの地にはライラ
ックの甘い香りがさわやかな風にのって何処から
ともなく漂ってきます。このちょっと切ないような
ほのかに甘酸っぱい香りは、私が青春時代を
過ごしたカナダの東部トロント郊外の情景を思い
出させてくれます。
 この北大植物園を訪れた時は、大きな一角を
占めるライラックの樹木が最盛期を誇るように
咲き競っていました。一口にライラックと言って
も、これほどの種類があるのかと驚くほどでした。
 案内板によると、この一帯のライラックは、
北海道大学創基100周年を祝って1976年に、
アメリカマサチューセッツ州のアマースト・ガー
デン・クラブ図書委員長のMrs.Mary Mariko
MAKI
夫人より寄贈された苗を、この植物園で
育成したものとのことでした。
MAKI夫人は、ボランティアグループのリーダー
として、特に北海道がアマーストに派遣した婦人
グループの受け入れに長年尽力されてきたそう
です。夫君のDr.John M.MAKI教授(ワシントン
州立大学,マサチューセッツ大学アマースト校、
政治学)には、北海道大学創基100周年の折に、
名誉学位が授与されています。ちなみにマサチュ
ーセッツ大学アマースト校は、かのクラーク博士
を札幌に送ったかつてのマサチューセッツ農科
大学であり、同教授の著書に『W.S.CLARK :
A Yankee In Hokkaido』
(高久真一訳「クラーク その栄光と挫折」) が
あります。

    『ライラック』 SYRINGA VULGARIS

モクセイ科ハシドイ属の落葉灌木で5月から6月に
かけて美しい花を房のように咲かせる。香りが良
く、香水も作られている。ライラックは英名、フラ
ンス名はリラ、和名はムラサキハシドイ、または
ハナハシドイ。ヨーロッパ南東部の原産で冷涼な
気候を好み、日本では北海道に明治中期に入り、
広く栽培される。
園芸品種も多い。日本に自生するハシドイは同
じ仲間で、高木になり白い花を咲かせる。
(モクセイ科)



 


     『ハルニレ』 ULMUS JAPONICA

ニレ属の中で最も大きくなる種類で、北海道に多く、肥沃な沖積地に林をつくる。同属のアキニレに対して春に花が咲くのでハルニレと呼ばれる。英名のエルム(ELM)でも良く知られている。本植物園や北大のキャンパスの景観を代表するところから北大を『エルムの学園』と呼ぶこともある。
ニレは世界各地で神聖視され、アイヌ神話でも『火の神』として敬われている。
高さ30m、直径2〜3mになることがある。
園内の大きいハルニレは樹齢約200年に達する。   (ニレ科)





 




ハルニレ


 




ハンカチノキ



 


  『ハンカチノキ』 DAVIDIA INVOLUCRATA

中国の中部から西南部に自生し、1科1属1種、
高さ20mぐらいになる落葉高木。花は球形の頭状
花序に付き、1個の両性花または雌花と多数の
雄花群からなり、基部に大小2片の白色苞が垂れ
下がる。
名前はこの苞をハンカチに見立ててつけられた。
本種は、フランス人でカトリック聖ラザル会の
ダヴィッド神父によって1869年7月中国四川
省宝興で発見されたものである。(ジャイアント
・パンダも同神父により、同年同場所で発見さ
れている。)
この株は佐藤英行氏により寄贈された。
 (ハンカチノキ科)





 


           ブナ
      FAGUS CRENATA

日本の温帯を代表する樹種で、東北地方を中心
とし、本州中部以南では山地の上部にあらわ
れる。北海道では渡島半島に分布し、寿都と
長万部を結ぶ黒松内低地帯を北限とする。
昔から各種の用材として利用された。日本では
庭園に用いられることは少ないが、ヨーロッパ
では紫色の葉を持つムラサキセイヨウブナや
シダレブナなどが庭園や並木などに用いられる。

…『世界自然遺産の白神山地』は、秋田県と
青森県の2県にまたがる世界最大級の広大な
ブナの天然森林地帯です。






 










 

         ムラサキセイヨウブナ
 FAGUS SYLVATICA VAR. ATROPUNICEA

北ヨーロッパに分布するヨーロッパブナの変種の
一つで、その名のように葉が濃い紫色をしている。
太陽に透かして見ると葉脈の間に紫色の色素が
多く集まっているのがわかる。
春に特に色が濃く、秋にはやや薄い色になる。
ドイツを中心として北ヨーロッパでは各地に普通
に見られ、公園などにも植えられるほか生垣にも
する。日本での繁殖は、もっぱらブナへの接ぎ木
による。










ハマナス




 


ハンザ
Rosa Rugosa
HYB. Hansa
(ハマナス)

 




レッドリーフ・ローズ
Redleaf Rose
Rosa rubrifolia







プリックリー・ローズ
Prickly Rose
Rosa acicularis
(オオタカネバラ)

 




ウッズ・ローズ
Woods Rose
Rosa Woodsii

 




メドウ・ローズ
Meadow Rose
Rosa Blanda

 

















 温室
 







 


今回の植物園探訪の第一目的は、礼文アツモリ
ソウに出会うことでした。しかしながら時期が
ずれてしまい結局は会えずじまい・・・。
本当は礼文島を訪れて直接、一目でも自生
するその姿に出会いたかったのですが、専任
教員として忙しい時期でもありましたし、お休
みはとれませんでした。

かわりにこの珍しい『チョウセンキバナアツモリ
ソウ』にベストのタイミングで出会うことができ
ました。そして『オオヤマサギソウ』も見事な姿
を見せてくれました。あの『アツモリソウ』も
とても立派に花咲かせていました。



 

『チョウセンキバナアツモリソウ』
(朝鮮黄花敦盛草)
Cypripedium guttatum ver. guttatum

チョウセンキバナアツモリソウは北半球の亜寒帯
から寒帯にかけて広く分布しますが、日本では
秋田県の一部にしか分布しないという特殊な
分布をするランです。エゾノクマガイソウや
デワノアツモりなどと呼ばれることもあり、地元
の秋田県ではオガノアツモリという名前も使わ
れたようです。草地や明るい林床を好み、
シベリアなど北方では低地に、雲南省などでは
山岳草地に生えています。開花期は普通6月で
小さな花を一つ咲かせます。
国内の自生地では盗掘が相次いだため、現在
環境省の絶滅危惧TA類に指定され、研究
機関によって増殖が試みられています。



 



この株は、種子を人工的に発芽させたものです。

 



オオヤマサギソウ
Platanthera sachalinensis


 



オオヤマサギソウの根元の葉は立派に
「ラン科」であることを物語っています。


 



アツモリソウ
Cypripedium macranthos