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2019のスミレたち    Spring, 2019 

スミレ属:Viola



スミレ (菫)
学名: Viola mandshurica






 


 今年、長万部の駅の線路付近に、一面に花咲かせるスミレを発見しました。特急北斗が通う線路づたいに、一面に元気良く咲いていました。あるものは鉄の線路に寄り添うように、あるものは瓦礫の間からのぞくように、ひたむきに一生懸命に花開くその姿には深い感動すら覚えました。
運よく手持ちのカメラに収め家で調べてみると、かの「スミレ」か、近似種アナマスミレのようでした。
 スミレは、普通、「●◎スミレ」という風にスミレの前にその種を表す具体的な名前がつきますが、これは学名が「マンジュリカ」といい「満州」を意味し、和名は「スミレ」のみです。
この「スミレ」は北海道から屋久島まで全国で見られ、また日本特産ではなく、中国から朝鮮、ウスリーまで広く分布しているとのことです。
数多いスミレの仲間の中で代表的な、そして最も親しまれているスミレです。「ザ・スミレ」と言えるでしょう。でもスミレ特有の高貴な紫色というよりは幾分白っぽく見えますが、これは撮影時間帯の関係で日の光の反射のせいと思われます。
列車が行き交う場所にもめげず、線路づたいに咲き続ける姿を見ていると、人間がその愚かさのゆえに万が一、この地球を破壊し、人間や動物達がこの地球上から消えたとしても、生き残るのはこうしたささやかな植物達ではないかと思われてきます。彼らこそが生き残り、「新たないのちの息吹」を次の世代に伝えていくのかもしれないと、ふと思ってしまいました。そうならないことを切に祈りつつ…。

 




スミレ

茶色い鉄製のレールを背景に咲く姿は
フラワーアレンジメントのようで
とってもおしゃれでした!


 




花後の実も見えますね!

 


横顔の「距のかたち」も愛らしく素敵です

その後、「北方圏生物研究会」の古い記事に
近隣の森町に咲く、スミレのことが
掲載されており、
「花弁の外側が白くなるタイプ。
太平洋側の海岸型。アナマスミレに似る」
とあり、このスミレにそっくりの花が
掲載されていました。



 


逆光を浴びた姿もすてき!

…ということで、これはアナマスミレではなく
本家本元の「スミレ」で良さそうです!









ニオイタチツボスミレ (匂立坪菫)
Viola obtusa (Makino) Makino

タチツボスミレに似て、花弁の紫が色濃く、
また花の中央が白い。
その紫と中央の白さが際立って美しい!

高名な植物学者牧野富太郎博士の名前が
冠されています




函館市内の由緒ある公園で、ニオイタチツボスミレに出会いました。このスミレは、やや希少種に近く、函館山の頂上付近で数年前に見かけて以来、その後は盗掘されたのか何度訪れても出会う事はありませんでした。
悲しい事に函館山は、今や希少種が次々と盗掘の被害にあっているようです。
ところが、誰でも簡単に訪れる事のできるこんな身近な公園に、艶やか(あでやか)に、しめやかに、このスミレが咲いていたのです!
その高貴な紫色の美しさ、すっきりと伸びた上品な姿、本当に美しいスミレでした。大きな木の根元に咲いたこの花に、一体何人の人が気づいたことでしょうか?

また、数年前に、この公園の桜の木々の下に、コスミレらしき葉だけが群生している場所を見つけ、その花が開花する所を見たいと一生懸命通ったことがありました。そしてついに一輪だけ咲いている姿を見つけたのが去年でした。そして今年は何輪ものコスミレが日の光を浴びながら咲いている場面に遭遇する事ができました。コスミレの葉の裏側は淡紫色で特徴的であり、花が咲く前から特定できました。
こうして、ニオイタチツボスミレ、コスミレの他にも、アカネスミレ、ヒナスミレ等が咲いているのを確認できました。
開花時期は毎年異なり、そのタイミングを逃すと、1〜2週間でその痕跡は跡形も無くなり、それらの花の存在すら気づくことも無いのだということを、痛感しました!

 




コスミレ 小菫
Viola japonica

花弁は幅が狭く、紫色のすじが目立つ
柱頭はカマキリ型





 




コスミレ 小菫
Viola japonica

葉の裏側は、淡紫色







 




ニオイタチツボスミレ (匂立坪菫)
Viola obtusa (Makino) Makino



 


こちらは、国の特別史跡とされる公園ですが、ここでは5年前から毎年、ヒゴスミレを観察しています。
ヒゴ(肥後)とは熊本県の旧名であり、ヒゴスミレの北限は宮城県とされ、明らかに移入種です。赤松などの移植時に移入したと思われます。
あるスミレ愛好家からの情報で、この公園にあるという漠然とした情報でついに出会う事ができました。その時は本当に信じられないくらいの感動でした!
今年、そのヒゴスミレの側に咲く、「ニオイタチツボスミレ」にも出会う事ができました。その予期せぬ場所での、予期せぬ出会いにも本当に感動しましたよ。
この地には、通常、どこにでも元気に咲き増え広がる習性のあるタチツボスミレの他にも、様々なスミレが咲いています。ヒゴスミレ、ニオイタチツボスミレ、シロスミレ、アメリカスミレサイシン、オトメスミレ、ニョイスミレ(ツボスミレ)等々
心の目を澄まし、見えないアンテナを張れば、意外な所に咲いている意外なお花に出会えるものだと感じています。

 




ヒゴスミレ 肥後菫
Viola chaerophylloides var. sieboldiana

葉は3全裂し、側裂片はさらに全裂し、5全裂状となる
スミレには珍しいこのギザギザの葉が
目印です






オトメスミレ 乙女菫
Viola grypoceras f. purpurellocalcarata

真っ白な花弁に、紫色の距が素敵です!

 
 




オトメスミレ 乙女菫
Viola grypoceras f. purpurellocalcarata

和名は牧野富太郎博士が、箱根の乙女峠で発見
したことに由来し、箱根には多いとのこと




 




土方歳三の遺体がしばらく埋められていたと
伝えられる松の木の根元の土饅頭の側には
このオトメスミレが点在しています

なんだか、ロマンがありますね!




 




エゾアオイスミレ (蝦夷葵菫)  2019
Viola collina






 今年は、3〜4年越しに出会いたいと願ってきた「アオイスミレ」についに出会えた記念すべき年となりましたが、その近縁種ともいえる「エゾアオイスミレ」は、2年前から毎年、函館のある場所で観察しています。アオイスミレに勝るとも劣らない愛らしい可憐なスミレです。
このエゾアオイの群生地に遭遇した私は、それらの花々に多少の違いがあるのに気づき、勝手に希望的観測で、それらを「アオイスミレ」と「エゾアオイスミレ」の2種と決め付けましたが、その後の調べとスミレ愛好家の助言で、これらは皆「エゾアオイスミレ」らしいということがわかり、納得する事ができました。
2017年には、ある切り立った斜面に10箇所以上、点在していたエゾアオイスミレが、翌年にはかなり減り、そして今年はほんの2箇所となっていました。
そういうわけで、同じ花がいつも同じ場所に、同じように咲くのではないという当たり前のことに、気づいた次第です。この場所は斜面であり、雪の重みで表層がズレ、移動するのだと思います。


 
 




エゾアオイスミレ (蝦夷葵菫)  2018
Viola collina

拡大していますが、実際は大豆ほどの
小さな小さなお花です






エゾアオイスミレ (蝦夷葵菫)  2018
Viola collina

アオイスミレは、地面に転がるように咲きますが、
このエゾアオイスミレは、やや直立するように咲く
傾向があるようです。それも大きな違いですね。
 


 


(比較の為に…) アオイスミレ(葵菫)2019


…でも似てますね〜〜〜!
ただ葉っぱが決定的に違います
これからは間違いなく同定できるし、
区別できると思います

 





エゾアオイスミレ (蝦夷葵菫)  2017

こちらの葉は、縦長のスペード形です
葉の色は瑞々しく柔らかな若葉色です

アオイスミレの方は、丸いフキの葉の形でした
葉の色は濃緑色で、硬めの質感です

このエゾアオイは伏せるように咲いていたので
一概に、直立傾向などとは言えないのかと…(汗)
 
 

    

エゾノタチツボスミレ 蝦夷立坪菫
Viola acuminata

そしてエゾアオイスミレの咲くエリアに、今年も元気に咲いていたこの花!
エゾノタチツボスミレです。
花の側弁の根元と雌しべの先端に 太い毛が生えているのが特徴。
背丈は30cmほどでかなり高く、そのわりに花は小さい。
茎葉は心形〜三角状卵心形で、上部のものほど大きい。托葉は櫛の歯状に裂け、縁に毛がある。

…などの特徴があります。
去年見たのは、坂の斜面の中ほどでしたが、雪の重みで地面の表層が降下したのか、
今年は、その遥か下の道路わきに咲いていました。