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  エンレイソウ系譜 U 2018 (赤花編)

エンレイソウ系譜
エンレイソウ系譜 U 2018 (赤花編)
エンレイソウ系譜 V 2018 (白花編)
エンレイソウ系譜 W 2018 (世界編)




トカチエンレイソウ ?
 


トカチエンレイソウ ?
 


コジマエンレイソウ

北海道には、日本中に自生する「エンレイソウ」の仲間が全部見られると言われます。
そのエンレイソウの種類は、「9種説」、「12種説」、「14種説」などいろいろです。
大まかに分けると、花弁を持たない「エンレイソウ」と、白い花弁を持つエンレイソウ、赤い花弁を持つエンレイソウの3つになるようです。その中の、赤い花弁を持つものには、「コジマエンレイソウ」、「ヒダカエンレイソウ」、そして「トカチエンレイソウ」の3種があります。このうちコジマエンレイソウは、道南を中心に比較的容易に出会える花です。またヒダカエンレイソウも、道央の森林公園でもお目にかかるチャンスはあります。ところが、「トカチエンレイソウ」 は、ある意味、幻のエンレイソウとも言われ、北大のエンレイソウの大家の先生も、北海道では見た事がないとおっしゃっていました。
上の写真の右端は典型的なコジマエンレイソウですが、左側の2枚はどうも様子が違います。道南の山で遭いました。私はこれが「幻のトカチエンレイソウ」だと希望的に思っておりますが…。
赤い花弁を持つエンレイソウ3種の起源は、
@コジマエンレイソウ:親は、オオバナノエンレイソウ & エンレイソウ
Aヒダカエンレイソウ:親は、ミヤマエンレイソウ & エンレイソウ
Bトカチエンレイソウ:親は、オオバナノエンレイソウ & エンレイソウ
このうち、コジマエンレイソウと、トカチエンレイソウは、親のオオバナノエンレイソウの形質を受け継いでいます。

 
 

オオバナノエンレイソウ(大花延齢草、Trillium camschatcense:  別名Trillium kamtschaticum

   


 


 


 

 
シュロソウ科エンレイソウ属の多年草。かつてはユリ科として分類されていた。
エンレイソウ属につけられた学名の Trillium は「3のユリ」を意味し、開花個体が3枚の花弁、萼片、葉を持つことに由来。
草丈は30-70cm程度に生育し、葉は菱形状広卵形で茎頂に3個を輪生。5-6月に茎頂に直径5-7cmの白い大きな3枚の花弁を付け、花の中央に子房(雌しべ)があり、その先は、暗紫色になる。その周りを6本の雄しべが取り囲む。雄しべは雌しべより長い。
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北海道を代表する「純白の貴婦人」、
オオバナノエンレイソウは、長く大地を覆っていた雪がようやく解けだし、野山が緑で覆われる5月、一斉に花咲かせます。
待ちわびた太陽の光を全身で吸収するかのように天を仰ぎ佇む姿には、品の良さが感じられます。
オオバナノエンレイソウはその名の如く、花弁が大きく、ガク片より長く、子房の先が暗紫色と言うのが特徴です。そして花弁もガク片も共に先が尖らないと言われますが、実際には写真のように個体差はかなりあります。

このページは、「赤花のエンレイソウ」のページですが赤花のエンレイソウのうち、「コジマエンレイソウ」と「トカチエンレイソウ」は、このオオバナノエンレイソウを親に持つため、その解説としてまず、この花を紹介します。

・・・実はシロバナノエンレイソウのページは、データ量が多すぎて、オオバナノエンレイソウはこちらのページに分割する事にしたのです。いずれにしても、「赤い花弁のエンレイソウ」のうち、「コジマエンレイソウ」と「トカチエンレイソウ」の片親はオオバナノエンレイソウであり、それと以下の花弁を持たない「エンレイソウ」との自然交配種から「赤花エンレイソウ」が生まれました。…ということで宜しくお願いいたします!
     


   
エンレイソウ(延齢草、Trillium smallii

 


 


シュロソウ科エンレイソウ属の多年草。別名、タチアオイ。「エンレイソウ」という呼び名は、他のエンレイソウ属 (Trillium) 植物に対して、またはエンレイソウ属全般を指して用いられる場合もある。
太く短い根茎から、高さ20-50cmの茎が一本伸び、その先端に3枚の葉を輪生する。葉は葉柄を持たず、茎から直接生ずる。葉の形状は丸みを帯びたひし形で、直径は10-20cm。花期は4-6月。3枚の葉の中心から短い花柄が伸び、小さな花をつける。花は花弁(内花被片)を持たず3枚の緑色または濃紫色のがく片(外花被片)を持ち、横向きに咲く。
果実(子房)の色により、アオミノエンレイソウ、クロミノエンレイソウ、アカミノエンレイソウの3種に分けられる。
オオバナノエンレイソウや、ミヤマエンレイソウなどとの種間交雑種が生じやすい。
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華やかな花弁(内花被片)を持つオオバナノエンレイソウやミヤマエンレイソウ、コジマエンレイソウなどに比べると、地味な感じは否めませんが、それでもガク片(外花被片)そのものにも美しさがあり、子房の色も様々の個性派ぞろいで魅力を感じます。



 
クロミノエンレイソウ  アオミノエンレイソウ 
アカミノエンレイソウ


 
   
     
    トイシノエンレイソウ  トイシノエンレイソウ 

 
 





   
トイシノエンレイソウ(砥石延齢草、学名:Trillium apetalon forma album

 


シュロソウ科エンレイソウ属の多年草。
太く短い根茎から、高さ20-40cmの茎が1本伸び、その先端に3枚の葉を輪生する。葉は葉柄を持たず、茎から直接生ずる。葉の形状は丸みを帯びたひし形で、直径は10-20cm程度。
葯は花糸とほぼ同長。
エンレイソウの仲間で、このトイシノエンレイソウの特徴は、ガク片が緑色で子房が黒く、雄しべが白いものを指す。時には子房が緑色のものもある。

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私がこのトイシノエンレイソウに出会ったのは、2011年〜12年当時でした。本当に奇跡に近い感動の出会いでしたが、近年、このトイシノエンレイソウが姿を消したのではと言う情報がネットに見られ、心痛めています。
種の保存の観点からも、絶対に盗掘はしてはいけないことだと思います。
   





   
コジマエンレイソウ(小島延齢草、学名:Trillium Amabile

   
シュロソウ科エンレイソウ属の多年草。北海道の海岸付近や山地の樹林下などに生え、茎の高さは20〜40センチ。茎頂に、直径3〜4センチの紅紫色の花を1個つける。外側に、緑色に淡紅紫色を帯びたがく(外花被片)が3個、内側に、紅紫色の花弁(内花被片)が0〜3個ある。葉は菱形状円形で、茎頂に3個輪生する。果実は液果で卵形。稜があり、淡緑色や暗紫色(ほぼ黒色)あり。和名コジマは、松前沖にある無人島の渡島小島に多く自生することに由来。
本種は、エンレイソウとオオバナノエンレイソウとの自然交雑種で、両種が混生する場所で見られる。
内花被片は、大きさが不ぞろいのものや、0〜3個と欠落する場合がある。同じ両親を持つトカチエンレイソウとの判別は、果実の形がコジマの場合は球形であり、トカチは円錐状球形の点である。

幻の花、トカチエンレイソウの染色体が倍加して生まれたとされる。函館、室蘭、留萌、小樽など、海沿いで多く発見されている。

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同じく赤い花弁をもつ、ヒダカエンレイソウや、トカチエンレイソウに比べて、このコジマエンレイソウは、花弁のつきもよく比較的整った形状です。両親であるオオバナノエンレイソウと古代エンレイソウAの遺伝子の親和性が良かったのでしょうか。安定した繁殖力を感じます。オオバナノエンレイソウの形質を受け継ぎ、真っ直ぐに上を向きお行儀の良いお嬢様風に見えます。そして何よりこのワインレッド(深紅色)はとても華やかで美しいです。函館山のこの群生地には、オオバナノエンレイソウと、エンレイソウ、そしてミヤマエンレイソウも混じって群生しています。道南にはコジマエンレイソウの群生地が点在していますが、最近は、コジマだけでなく、ヒダカエンレイソウや、トカチエンレイソウが見られる可能性もあるのではと思っています。
     
   
   
   
   
           変わり者  
  全て2の倍数で、葉が2、ガク片が2、花弁が2です





   
ヒダカエンレイソウ(日高延齢草、学名:Trillium miyabeanum )

   
シュロソウ科エンレイソウ属の多年草。低地〜山地の湿り気のある林内などに生え、茎の高さは20〜40センチ。茎頂に、直径3〜4センチの紅紫色の花を1個つける。外側に緑色に淡紅紫色を帯びたがく(外花被片)が3個、内側に紅紫色の花弁(内花被片)が0〜3個ある。葉は菱形状円形で、茎頂に3個輪生する。果実は液果で卵形。稜があり、緑色〜紫色と変化が多い。
本種は、エンレイソウとシロバナエンレイソウとの自然交配種で、両種が混生する落葉樹林内などで稀に見られる。内花被片は大きさが不ぞろいのものや、0〜3個と欠落する場合がある。

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上から大小7枚目までの写真は、野幌自然公園に咲く花で、山花愛好家の方にヒダカエンレイソウだと教えられたものであり、ほぼ間違いないと思います。

次の4枚は、登別付近の自然林で見つけた赤花を持つエンレイソウです。周囲にはエンレイソウや、シロバナノエンレイソウが多く咲いていました。2011年のことです。
花弁の無いエンレイソウとしては、かなり大型で立派なものが沢山咲いている中に、よく見ると、小さな未発達の赤い花弁がついているのを発見し、驚いたものです。その周りに咲いていたエンレイソウも花弁はないものの、やがて花弁をつける予備軍だったのだと思います。ところが、翌年訪ねると、その場所は立派な人工公園となり、エンレイソウは跡形もなく消えていました。本当に残念です。

オオバナノエンレイソウを親にもつコジマエンレイソウに比べて、シロバナノエンレイソウを親にもつこのヒダカエンレイソウは、親の性質を受け継いで、横向きもしくは下向きで、また内花片(花びら)の形状はあまりはっきりとしていないものが多いように見られます。雄しべが内花片に変化しかけたようなものも沢山ありました。
最下段の2枚は、有珠山で出会いました。花期は終わりかけていましたが、何とか間に合いました。子房の形がコジマとは違いますし、雄しべはかなり短く顕著でした。
    
   
   
   
 
 
   


   
トカチエンレイソウ(十勝延齢草、学名:Trillium x yezoense ) (未同定)


シュロソウ科エンレイソウ属の多年草。低地〜山地の湿り気のある林内などに生え、茎の高さは20〜40センチ。茎頂に、直径3〜4センチの紅紫色の花を1個つける。外側に緑色に淡紅紫色を帯びたがく(外花被片)が3個、内側に紅紫色の花弁(内花被片)が0〜3個ある。葉は菱形状円形で、茎頂に3個輪生する。果実は液果で長めの円錐形。
本種は、エンレイソウとオオバナノエンレイソウとの自然交配種で、両種が混生する落葉樹林内などで極めて稀に見られる。内花被片は大きさが不ぞろいのものや、0〜3個と欠落する場合がある。

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上の2枚の写真は、道南の日本海側、乙部の森林で見つけました。ニリンソウなどのスプリングエフェメラルの花々が咲き乱れる美しい丘に、一輪だけ凛として咲く姿がとても際立っていました。面影はコジマエンレイソウに似ていますが、その近隣にはコジマエンレイソウの群生はなく、これ以外には、オオバナノエンレイソウと花弁の無いエンレイソウが所々に点在していました。また、この子房の形は、コジマのような球形ではなく、トカチ特有の長めの円錐形です。その下の一枚は、恵庭公園で見つけたもので、やはりコジマエンレイソウとも、ヒダカエンレイソウとも違うものを感じます。とりわけ子房の形が細長く前に突き出している点で、コジマとは一線を画していると思われます。いかがでしょうか。
また、コジマの場合は、雄しべは子房と同等か長めとされますが、とりわけ上の2枚は、雄しべはかなり短めで、その点でもトカチエンレイソウの条件に合致します。
 
   
     




   
(未同定) 赤い花のエンレイソウ


ここに挙げた4枚は、判断が難しいので(未同定)としてとりあえず掲載します。

上段の1枚は、野幌自然公園で見つけました。他にもここには、「知る人ぞ知る」でヒダカエンレイソウが存在しています。けれど、この一枚の形状はどちらかというとオオバナノエンレイソウ系の形質を受け継いだもののように見えます。(全くの素人の見解です)
その下の3枚は、2011年にニセコの自然林道路わきで見つけました。形状からはミヤマエンレイソウ系のヒダカエンレイソウかと思いました。もしくはトカチエンレイソウの可能性もありでしょうか? あきらかにコジマエンレイソウとは、子房の形状、長さにおいてはっきりと異なります。
同定できるまで、未同定としてここに掲載しておく予定です。

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 2010年に北海道での山歩きを始め、早春の野山に咲くスプリング・エフェメラルの愛らしさに魅せられ続けてきました。とりわけエンレイソウのバラエティに富んだ美しさにはとても惹かれました。2011年に「エンレイソウ系譜」でエンレイソウの種の豊かさを、素人の一考察としてまとめました。その当時から一目みたいと願ってきた「カワユエンレイソウ」に2018年5月、ようやく初対面を果たすことができました。本当に嬉しい出会いでした。
 そして間もなくして、もう一つ珍しい「ソウヤノエンレイソウ」という種があることを知りました。ほとんどの図鑑や山花愛好家のブログにも取り上げられていませんが、梅沢俊氏の『北海道 春の花 絵とき検索表U』に、出てきます。それによると、その「ソウヤノエンレイソウ」は、オオバナノエンレイソウの系列で、「子房は淡いクリーム色で先端部は緑色」となっています。以前にもこのことを見た記憶はありましたが、その後、それ以外の図鑑や記事では見聞きしたことがなかったため、すっかりその存在が抜け落ちていました。しかしこのことを目にした瞬間、どうしても会いたくなりました。しかしながら、すでに北国の高山帯でもおそらくはエンレイソウの開花時期は終了している時期です。出会いのチャンスは来年に持ち越しとあきらめざるをえませんでした。ところがこれまで撮り貯めた写真をくまなくチェックしたところ、その「ソウヤノエンレイソウ」らしき花の写真がありました。まだ未同定であり、確証はありませんが・・・。そして、当時は「コジマエンレイソウ」と判別がつきにくかった「ヒダカエンレイソウ」、そして「トカチエンレイソウ」とおぼしき花まで見つかりました。一応、「未同定」ながら、掲載してみました。

以下に、現段階でのシュロソウ科エンレイソウ属の13種類の名を挙げてみました。
 (12種類+ソウヤノエンレイソウが追加!)
 様々な資料情報では、「日本全国に自生するエンレイソウは9種」あり、北海道にはその全種が
自生する。・・・として「エンレイソウは9種」という分類法が根強く存在するようです。
その場合は、以下のうちの太字赤のものを指していると思われます。


 @  オオバナノエンレイソウ  (白花)(子房の先は暗紫色)
 A  エンレイソウ (花弁なし)(子房の色:クロミ、アカミ、アオミのエンレイソウ含む)
 B  シロバナエンレイソウ (白花)(別名:ミヤマエンレイソウ)(子房の色:白・クリーム色)
 C  エゾミヤマエンレイソウ (白花)(子房全体が紫色) 
 D  ムラサキエンレイソウ (ピンク・薄紫花) (変種)
 E  シラオイエンレイソウ (白花)(花弁がやや波打つ)
 F  コジマエンレイソウ (赤花)
 G  ヒダカエンレイソウ (赤花)
 H  チシマエンレイソウ (白花) (子房全体が暗紫色、または黒色)
 I  トイシノエンレイソウ (緑がく片) (子房は黒色)(雄しべは白い)
 J  カワユエンレイソウ (白花)(子房の先は赤紫色)
 K  トカチエンレイソウ (赤花)
 L  ソウヤノエンレイソウ (白花)(子房の先は淡緑色) 


(この他、花弁の無い「Aエンレイソウ」の(クロミ、アカミ、アオミ)ノエンレイソウを
それぞれ別種類と数えて、全部で「14種類」(+ソウヤノエンレイソウで15種)とする説もあるようです。)

また、Cエゾミヤマエンレイソウ、Dムラサキエンレイソウの2種をBシロバナエンレイソウの変種
個体差と捉えて、一つにする分類法もあります。
                
  (続きをご覧ください!) (ページの容量の関係で、分割しました)

 
エンレイソウ系譜
エンレイソウ系譜 U 2018 (赤花編)
エンレイソウ系譜 V 2018 (白花編)
エンレイソウ系譜 W 2018 (世界編)
*参考資料
・新版『北海道の高山植物』 梅沢俊 (北海道新聞社)
・北海道 春の花 『絵とき検索表』 梅沢俊
・「エンレイソウ属の花たち」(ファウラ)本間秀夫/大原雅
・「エンレイソウ」(Wikipedia オンライン辞書)
・花を愛してやまない山野草愛好家の皆様のブログも参考にさせていただきました。

掲載した写真は、全て私(このHP管理主)が撮影しました。著作権は当方に帰属します。