♪ 小さな私塾の先生から見た子ども達、風景、異文化の世界 ♪
花と光と風と…
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  エンレイソウ系譜  2011〜
エンレイソウ系譜
エンレイソウ系譜 U 2018 (赤花編)
エンレイソウ系譜 V 2018 (白花編)
エンレイソウ系譜 W 2018 (世界編)

エンレイソウの思い出 2010
エンレイソウ道南1
エンレイソウ道南2
エンレイソウ十勝
エンレイソウ広尾
エンレイソウ野幌
エンレイソウ道央
エンレイソウ川湯
ミヤマエンレイソウ
シラオイエンレイソウ
コジマエンレイソウ

 (後で、エンレイソウ中心
  に編集予定です)
 

エンレイソウ 全種一覧: 今まで出会った愛らしいエンレイソウ(延齢草、Trillium smallii )です!

 オオバナノエンレイソウ トイシノエンレイソウ  ミヤマエンレイソウ  ヒダカエンレイソウ
コジマエンレイソウ  シラオイエンレイソウ   ムラサキエンレイソウ エゾミヤマエンレイソウ 
(アオミノ)エンレイソウ   (アオミノ)エンレイソウ  (クロミノ)エンレイソウ (アカミノ)エンレイソウ
 チシマエンレイソウ カワユエンレイソウ  シラオイエンレイソウ   八重咲エンレイソウ
シロバナエンレイソウ   (トカチエンレイソウ)?  ソウヤノエンレイソウ ?  エンレイソウ
     


上の写真は、2011年になって初めて出会った記念すべき「エンレイソウ」の花々です。(2018年:更新、追加)
去年もいくつかのエンレイソウに出会いましたが、山歩きを始めた頃はすでにエンレイソウの最盛期は過ぎようとしていました。その後、北海道には日本に自生する12種類のエンレイソウ属の全てがそろっているということを聞き、是非その全てに出会いたいと思いました。…というわけで、2011年の『マイ・ブーム』は、北海道に自生するエンレイソウを「全クリア」すること!…と、なりました。その12種類とは…

 @ オオバナノエンレイソウ  (白花)(子房の先は暗紫色) 
 A エンレイソウ (花弁なし)(子房の色:クロミ、アカミ、アオミのエンレイソウ含む)
 B シロバナエンレイソウ  (白花)(別名:ミヤマエンレイソウ)(子房の色:白・クリーム色)
 C エゾミヤマエンレイソウ (白花)(子房全体が紫色)
 D ムラサキエンレイソウ (ピンク・薄紫花) (変種)
 E シラオイエンレイソウ (白花)(花弁がやや波打つ)
 F コジマエンレイソウ (赤花)
 G ヒダカエンレイソウ (赤花)
 H チシマエンレイソウ (白花) (子房全体が暗紫色、または黒色)
 I トイシノエンレイソウ (緑がく片) (子房は黒色、または緑色)(雄しべは白い) 
 J カワユエンレイソウ (白花)(子房の先は赤紫色)
 K トカチエンレイソウ (赤花) 
L  ソウヤノエンレイソウ (白花)(子房の先が緑色)    …追加

(この他、花弁の無い「Aエンレイソウ」の(クロミ、アカミ、アオミ)ノエンレイソウを
それぞれ別種類と数えて、全部で14種類とする説もあるようです。)




   
 シラオイエンレイソウ(白老町 2011)   シラオイエンレイソウ(北斗市 2016)
                
 このうち、2011年の5月末現在では、上記10番目までに出会うことができました。
早春の森の、まだ林の木々に葉が茂る前の明るい林床に、ひっそりと咲くその姿は、まさに、森の妖精、もしくは清純な貴婦人のようで、山歩きに疲れた心と体を癒してくれます。
 こうした早春の森にいち早く咲き、短期間に光合成をして必要な栄養分を根に蓄える植物を総称して
『春植物』(スプリング・エフェメラル)と呼びます。カタクリ、ヒメイチゲ、ニリンソウ、エゾエンゴサク、などがあげられます。みんなそれぞれに愛らしい春の妖精たちですね。
 その中でもとりわけこのエンレイソウ属は、種間雑種が生じやすく、変異や変種、奇形も時々みられます。それ故に、同じ白い花をつけるオオバナノエンレイソウやシラオイエンレイソウの違い、また赤い花をつけるコジマエンレイソウとヒダカエンレイソウとの違いなどは、様々な図鑑を調べてもなかなか特定するのは容易ではありませんでした。そこで確かな情報をたよりに、それぞれの生息地に赴き、その微妙な特徴と差異を調べ、確信するに至ったと思っています。
そして、私が出会ったエンレイソウの写真をもとに、これらの花々の『家系図』を作ってみようと思いました。勿論、これはあくまでも「しろうと」としての趣味の段階なので、独断と偏見はご容赦くださいませ。
 
 
 (さまざまな文献を総合すると…)   

元々、エンレイソウには基本となる3種がありました。
オオバナノエンレイソウ、絶滅し消えてしまったエンレイソウ と、エンレイソウの3種です。
その後、AとBが交配し、よく見かけるエンレイソウが生まれました。
また、オオバナノエンレイソウとAが交配して、ミヤマエンレイソウが生まれました。


X X
 オオバナノエンレイソウ


 
 絶滅したエンレイソウ


 
 絶滅したエンレイソウ
   A B 
  (イメージ)  (イメージ) 
     
     
 ミヤマエンレイソウ    エンレイソウ



次に、がく片だけのエンレイソウは、実(子房)の色によって、アカミノエンレイソウ、クロミノエンレイソウ、アオミノエンレイソウに分けられます。その中に全身が淡い緑色のエンレイソウが見られます。色素を欠いた「白子」の一種でしょうか。調べても特別名前は無いようです。

(⇒その後の調べで、この全てが緑のエンレイソウは、トイシノエンレイソウと同種で、子房の色が黒にならず緑のままだったものだという説が見つかりました。たしかに、このエンレイソウと遭遇した2箇所とも、そばにトイシノエンレイソウが咲いていました。)

 アカミノエンレイソウ クロミノエンレイソウ  アオミノエンレイソウ   アオミノエンレイソウ
 
 アカミ(結実) クロミ(結実)   アオミ(結実)  アオミ(結実)
   ↓  ↓  
 
 トイシノエンレイソウ



 次に来るのは、白い花をつけるオオバナノエンレイソウと、それとエンレイソウとの混雑種であるミヤマエンレイソウ(=シロバナノエンレイソウ)、シラオイエンレイソウ、カワユエンレイソウ、そしてチシマエンレイソウです。ムラサキエンレイソウやエゾミヤマエンレイソウは、変種としてミヤマエンレイソウに含まれるようです。

(以下の系統図は、オオバナノエンレイソウと、ミヤマエンレイソウ(シロバナ)の流れが分かりやすいように手を加え、変更しました。(2018年6月 改訂)

 →  オオバナとミヤマの
自然交配種

両方の特徴を併せ持つ
 ←
 オオバナノエンレイソウ  ミヤマエンレイソウ
   (シロバナノエンレイソウ)






     
   
     チシマエンレイソウ   シラオイエンレイソウ   ムラサキエンレイソウ 
   
  ソウヤノエンレイソウ    カワユエンレイソウ   エゾミヤマエンレイソウ 
上向き    横向き     やや下向き


 さてその次は、ワインレッドの花をつけるエンレイソウです。
   エンレイソウ  X オオバナノエンレイソウ → 
コジマエンレイソウ
   エンレイソウ  X オオバナノエンレイソウ → 
トカチエンレイソウ
    エンレイソウ  X ミヤマエンレイソウ    → 
ヒダカエンレイソウ

こうして地上から消えたA種とB種の遺伝子はエンレイソウの中で保存され、あるいは、エンレイソウとミヤマエンレイソウの中に別々に残されたA種の遺伝子は、ヒダカエンレイソウの中で再び出会ったといわれます。・・・なんだか、壮大な絵巻を見ているような気がしてきますね。


X
     エンレイソウ(A) X オオバナノエンレイソウ 
    (絶滅種)   
      ↓↓ 
X  X
 オオバナノエンレイソウ X エンレイソウ(+A),(+B) X ミヤマエンレイソウ(+A)
上向き・やや横向き 上向き・横向き・下向き  横向き
花弁がガク片より大きい     ガク片のみ   花弁とガク片が同じ大きさ 
↓↓  ↓↓ 
 
↓↓ 
       
  コジマエンレイソウ   トカチエンレイソウ    ヒダカエンレイソウ 
上向き・やや横向き   上向き・やや横向き     横向き・やや下向き
 子房が丸い   子房が長く円錐形    子房が長く円錐形 



 話は飛びますが、実はカメラを片手に、山野を歩きながらエンレイソウを探しつつ、もう一方で、私の頭は「種の起源」や、人間の間における先住民族と大陸移動してくる他民族との出会い、交流、混合の歴史に焦点を合わせていました。生物は、植物は、そして人類やその民族はどのように出会い、そして進化してきたのか。全くの門外漢でありながら、その自分の思考のパターンというか、その関連付けが我ながら面白く、険しい山歩きの楽しみの一つとなりました。例えば、昔あこがれたシルクロードの拠点の町々や、マレーシアの港湾都市マラッカの多民族が行き交い共存する姿が浮かんでは消えて行きました。

 話をエンレイソウに戻しますが、
まず、単にエンレイソウと呼ばれる種類は、花弁がなくがく片だけのものを指します。がく片の色は、薄い緑がかったもの、あずき色に近いもの、その中間のものやストライプ状になったもので、子房(のちに実になる部分)の色が赤いもの、黒いもの、緑がかったもの、もしくはクリーム色のものがあり、それぞれアカミノエンレイソウ、クロミノエンレイソウ、アオミノエンレイソウと呼ばれます。

 白い花弁(花びら)を付けるのは、ミヤマエンレイソウ、オオバナノエンレイソウ、シラオイエンレイソウ、カワユエンレイソウ、そしてチシマエンレイソウですが、そのうちミヤマエンレイソウだけが、花弁も雌しべ(子房)も雄しべ(葯)も全てが真っ白でやや横向きに咲きます。より深い山や高山帯に咲き、あまり株立ちをしていないようです。チシマエンレイソウは子房が真っ黒なので識別が容易です。
それ以外の3種は子房に暗紫色の斑点があります。その中で上向きで、花弁ががく片よりだいぶ長く細長い印象のものがオオバナノエンレイソウで、葯がかなり長めです。
シラオイエンレイソウは、ミヤマエンレイソウとオオバナノエンレイソウとの自然交雑種とされていましたが、最近はムラサキエンレイソウとエゾミヤマエンレイソウとの自然交雑種という説もあるようです。実際に、シラオイエンレイソウの群落付近に、オオバナノエンレイソウが見られないという報告が多々あるようです。私もそれは感じてきましたが・・・。このシラオイエンレイソウの同定のポイントは、花弁も三枚の葉も共に波打ってフリルのようになっているものが多い点です。そして親と同じように花が横向きです。



 その次は、赤い花弁をつけるコジマエンレイソウ、ヒダカエンレイソウ、そしてトカチエンレイソウです。コジマエンレイソウは道南の渡島小島での発見に由来した名で、道南の海岸線に沿って分布している場合が多いようです。道南エリアにはこの群生地が所どころにありますが、まるで園芸種のように華やかで美しい花ぞろいです。コジマエンレイソウはオオバナノエンレイソウと花弁のないエンレイソウとの自然交雑種、それとよく似たヒダカエンレイソウは、ミヤマエンレイソウとエンレイソウとの自然交雑種といわれます。
 コジマエンレイソウは親のオオバナノエンレイソウ同様に、上向きで首筋をシャンと伸ばし肩を落とした感じがします。そしてヒダカエンレイソウの方は、首がうつむき加減で、葉が肩に大きく被さったような野性味があります。トカチエンレイソウは、所在不明で(?)今の所、出会えそうにありません。一説には、稔性がないため、繁殖しないので、きわめて少ないとのこと。ちなみに「稔性」とは、有性生殖が可能であること。交配に親和性があり、受精して子孫を作れることです。これもまたオオバナノエンレイソウとエンレイソウとの自然交雑種で、コジマエンレイソウと花の色その他の特徴が良く似ているそうです。
 ・・・ということは、トカチエンレイソウの同定のポイントは、オオバナノエンレイソウとエンレイソウが混在するエリアに、ポツリポツリと点在するように咲く、赤い花弁のエンレイソウで、群落をつくらず、しかもコジマエンレイソウに面影が似ている花ということでしょうか。

 ・・・2011年も6月に入り、そろそろエンレイソウは花が落ちて、実をつけ始めました。
残りはカワユエンレイソウとトカチエンレイソウを残すのみとなりましたが、今年のエンレイソウ・ハンティングは、これでお終いにしようと思います。楽しみは来年に…ということで!
                           



おまけ…時にはこんな不思議なエンレイソウにも出会います。


     
             
             



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